Q1.LD発達相談センターと心理相談室の違いは?
A1.
LD発達相談センター(以下センター)は、簡単に言うと子どもの発達全般に関する療育・相談機関です。そこでは学力面や認知面などにおいて、その発達に何らかの問題や課題のあるお子さんに対して、発達心理・療育などの専門家スタッフが問題や課題にあった指導や教育相談を行っています。それに対して心理相談室では、情緒的な不安定さや不登校などといった心理的な要因(心の問題)を抱えるお子さんや大人に対して臨床心理学の専門家スタッフがカウンセリングやプレイセラピーをしています。
Q2.心理相談室ではどんなことをするの?
A2.
先ほど述べたように、心理相談室では心の問題を扱います。心の問題というのは目に見えないものですからその内容は人それぞれみんな違うものになります。また心の問題というのは、ひとつの原因や答えがあるというものでもありません。ですから心理相談室では、特に何かの課題などをしなければならないということはありません。そこではカウンセラーと一緒に遊んだりお話をしたりというように、守られた自由な空間で決められた時間を過ごします。
Q3.ただ遊んだり話したりするだけで効果があるの?
A3.
まず“遊ぶ”ということですが、子どもにとって“遊び”とは心にとっても体にとっても成長していくためにはとても大切なことです。遊びのなかには“創造性”や“開放性”の他に“攻撃性”や“衝動性”などの多くの要素が含まれています。守られた場所で、遊びを通して獲得できるものは思っている以上に大きいものです。また心に傷を持つ子どものなかには他人とうまく遊べないということもよく見られます。そんな場合には、カウンセラーと一緒に遊ぶことが人間関係の修復(信頼感の獲得)にもつながります。次に“話す”ということですが、カウンセラーは話を聞く(聴く)専門家などとも言われるように“聴く”ということに力を注ぎます。専門用語に「傾聴」という言葉があるのですが、まさに話し手のメッセージに耳を傾けるのです。それは話の内容だけでなく全ての感覚を研ぎ澄ませて相手を解ろうとすることです。だから、カウンセリングでの“わかってもらえた”という体験は、それだけで心の問題の解決につながることもあります。これは先に述べた信頼感にも通じることでしょう。この他にも箱庭を作ることや絵を描くこと、また夢(寝ているときの)を扱うこともあります。
Q4.箱庭療法ってどんなことをするの?
A4.
箱庭療法とはカウンセリングや心理療法において、日本ではよく使用される技法です。技法と言っても特別な決まりはなく、砂が入っている箱(54cm×72cm×7cm)にミニチュアの人形や家などを置き、自由な表現を行ってもらいます。出来上がった作品から作った人の心理状態が解るというように思われることも多いのですが、そのように診断(テスト)的に見るというよりは自由に表現すること自体に治療的な意味があると言えます。人によっては、ただ作品を作るだけなく作った作品をもとに物語を作ったり、作ったものを壊す遊びに変わってしまったりする場合もあります。カウンセラーに見守られてこれらのプロセスを体験することに意味があるのです。たとえば、ほとんど会話が出来なかった場面かん黙のお子さんが、箱庭を作っていくうちに段々と楽しそうな表情になってきて作品を説明し始めたなんてこともあります。砂箱という限られた空間の中で自分を表現するということは、そのままカウンセリングルームで守られた自由な体験をするということにも通じるのだと思います。
Q5.夢で何かがわかるの?
A5.
心理療法で夢を扱うことはそんなに珍しいことではないのですが、その扱い方や考え方にはいろいろな方法や理論があります。一般的には、こころや無意識からのメッセージとして考えることが多いと思います。たとえば朝になるとお腹が痛くなるという子がカウンセリングを受けに来ました。いつも決まって朝になるとお腹が痛いと言うので、何か学校で嫌なことでもあるのではないかといろいろと尋ねてみますが、本人は「特にない。学校は好きだ。」と言うだけです。もちろん内科の検査も受けますが異常は見当たりません。あるときカウンセリングの中で、その子がウサギになった夢を見たと話してくれました。ウサギになったその子は夢の中で食べ物がなくて困ったと言うのです。話を続けて聞いていくと、その子はニンジンが嫌いだということを話し出しました。そこで<学校の給食でもニンジンが出るでしょ?>と聞いてみると、その子は「好き嫌いはいけないから我慢して食べているけど本当は嫌いなんだ」と打ち明けてくれました。今までその子はニンジンが嫌いなことは悪いことだと思って親にも先生にも話したことはなかったようです。それから2人でニンジンの嫌いなところをいっぱい話し合いました。ここで簡単にこの夢を整理(解釈)してみると、この子はウサギのように従順に嫌いなものを我慢していたと言えるのかもしれません。けれども、そんな解釈をその子に伝える必要はありませんでした。その後、朝の腹痛は少しずつなくなっていったからです。もうおわかりかと思いますが、その子にとって必要だったのは「ニンジンが嫌いだ」と正直に打ち明けることだったのです。だからと言って、その子がニンジンを食べなくなった訳ではありません。「マズィ〜」と思いながら食べられるようになったのだと思います。嫌いなものを嫌いだと思えなかった(思ってはいけなかった)わけですから、お腹が痛いと身体で訴えるしかなかったのだと思います。そしてそのことに気付かせてくれたのが夢だったのです。
Q6.カウンセリングではどうなったら終わりになるの?
A6.
さっきの例で見てみると「朝、お腹が痛くなる」という“今一番困っていること”がなくなって“ひとつの終わり”となりました。ここでなぜ“ひとつの”という言葉を付け足しているのかと言いますと、終わりというのは単純に問題が解決したということではないからです。さっきの例の子の場合、確かにお腹が痛くなることはなくなりました。しかし“他のことでも嫌なことを嫌と言えるようになったのか?”さらに“なぜこの子は嫌と言うことが出来なかったのか?”などなど、抱えている問題や課題はまだあるのかも知れません。だからはっきりと『こうなったから終わり』というようなマニュアルは見当たらず、カウンセリングの終わりというのはなかなか難しい問題です。この辺りはカウンセラーの学んできた知識や経験に頼るところが大きいように思います。私の場合ですと、その人(子)の持っている力を基準にしているところがあります。カウンセリングというと、カウンセラーが困ったことや悩みに対して答えを教えてくれると思われることも多いのですが、その人の答えはその人にしか見つけられないものです。カウンセラーはそのお手伝いをするのですが、やはりその問題に向き合うのは本人自身なのです。そして、その人が抱える問題に向き合える力がある(ついた)かどうかをじっくりと見極めて終わりにするという感じです。言葉にするのは難しいのですが“豊かさ”“明るさ”“自然さ”“たくましさ”というようなことになります。それは困っていることや問題や悩みをただ単に“悪いこと”と決めつけるだけではなく、それらの困難がその人の人生にとって意味のあるものと捉えることにもつながるのだと思います。ですから、問題が残ったまま終わりになることもありますし、それどころか実際は何となく終わっていくことのほうが多いのですが、それはそれでいいのだろうと思っています。カウンセリングの終結で今でも忘れがたい場面があります。中学生の男の子だったのですが、涙をこらえながら「先生ありがとうございました。でも、もう2度と会うことはないと思います」と頭を下げて帰っていきました。カウンセリングの終わりということを見事に伝えてくれた印象的な言葉でした。